【東京】住宅設備大手のLIXIL(東証1部・5938)は4月2日、米国連結子会社ASD Holding Corp.が展開する浴槽事業を現地企業American Bath Group(ABG)に譲渡する基本合意を締結したと発表した。事業譲渡は3月31日付で完了しており、2025年3月期第4四半期決算に「その他の収益」として計上される見通しだ。
事業再編の背景と戦略的LIXILグループは2024年度中期経営計画で「コア事業への選択と集中」を掲げており、今回の処分はその一環。瀬戸欣哉CEOは「北米市場における浴槽事業の競争力強化が目的」と説明。ABGは米国で30年以上の実績を持つ浴室関連製品専門メーカーで、高級ブランド「DXV」や大衆向け「American Standard」の認知度を相互活用できる点が評価された。
譲渡対象はASDが保有する:
- 米国テネシー州とオハイオ州の生産設備の一部
- 関連在庫資産・固定資産
(譲渡金額は非開示)
対象事業の2024年3月期売上高はASD全体の約10%を占める。LIXIL広報部への取材によれば、生産拠点2か所の従業員約150名はABGへ移行する方針という。
市場専門家の分析
大和証券アナリスト・田中宏樹氏の見解:
「LIXILは2013年にAmerican Standardを買収して北米進出を果たしたが、近年は住宅市場の減速で収益圧迫が続いていた。今回の提携でABGの生産ノウハウと自社ブランドを組み合わせることで、営業利益率5%台の改善が期待できる」
みずほリサーチのレポートでは:
「2025年3月期に数十億円規模の特別利益が発生する可能性が高い。ただし北米住宅市場の金利動向には注意が必要」
業績への影響
LIXILは2025年3月期通期業績として:
- 売上高:1兆8500億円(前年比+3.2%)
- 営業利益:950億円(同+8.5%)
を予想しているが、今回の譲渡益を反映した修正予想は5月中に開示される見込み。
競合他社の動向:
- TOTO(東証1部・5332)は米国で独自拡大路線を堅持
- ノーリツ(同・5933)はアジア市場に注力 今後の展開
両社は提携後も以下の協力を継続:
- 既存顧客への供給体制維持
- 共同開発による新商品投入(2026年度までに3機種予定)
- サプライチェーン最適化によるコスト削減
ABGのリック・ストーンシパーCEOは「LIXILの技術力と当社の流通網が相乗効果を生む」とコメント。LIXIL側も「5年以内に北米市場シェア10%獲得(現行7%)」を目標に掲げる。