2025年後半、日本株式市場では「クリーンテック」「フィンテック」「ヘルステック」の三大テーマが、成長ドライバーとして投資家の注目を集めている。政府のGX推進政策やデジタル通貨整備、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速などが背景にあり、これらテーマに関連する本命銘柄を改めて検証した。
クリーンテック:再生可能エネルギーとGXビジネス
クリーンテックでは、日本の独立系再生可能エネルギー発電会社「レノバ(RENOVA)」がひときわ注目されている。太陽光、風力、バイオマスなど幅広い分野で発電所を開発・運営しており、国内28箇所以上の再生可能エネルギー・プロジェクトを抱え、総発電能力は1,600MW(メガワット)規模に達している。さらに、アジア各国にも拠点を展開しており、GX(グリーントランスフォーメーション)対応事業の柱とされている。
また、商社大手の伊藤忠商事は、国内外でアンモニア燃料を使った船舶の開発や太陽光・蓄電事業を積極展開中。福島や岡山、ベトナムなどでメガソーラー案件を複数抱えており、再生可能エネルギーの供給インフラ強化に直結するビジネスが拡大している。
クリーンテック関連のETFとして「グローバルX クリーンテック-日本株式ETF(銘柄コード2637)」があり、FactSet Japan CleanTech & Energy Index に連動。再生可能エネルギーを中心とした銘柄群を広くカバーしており、分散投資かつテーマ投資を両立できる選択肢として注目されている。株価は2025年9月10日時点で約1,662円。年初来の高値更新や流動性もまずまず良好だ。
フィンテック:決済革新とデジタル通貨の台頭
フィンテック分野では、国内でステーブルコイン、ブロックチェーン関連、デジタル決済・プラットフォームを手がける企業が動きを見せている。たとえばSpeee(4499)は、その子会社Datachainによる電子決済関連技術・ステーブルコイン実用化プロジェクトに参画している。USDCの取扱いや銀行との協業もニュースとなっている。
SBIホールディングス(8473)も注目株のひとつ。連結子会社によるUSDCの一般向け取り扱い開始や、ステーブルコイン流通・プラットフォーム構築に関する研究・実証実験に関与している。規制や制度整備が進めば恩恵を受けやすいポジションにある。
また、ETF/ファンド視点では「グローバルX フィンテック-日本株式ETF(銘柄コード2836)」があり、フィンテック関連の複数銘柄をまとめて保有できる。過去6か月で+20%台の上昇、設定来でも安定した上昇実績を持っており、個別株よりリスクを抑えてテーマに投資したい投資家に支持されている。
ヘルステック:医療DXと遠隔医療、予防医療の拡大
ヘルステック分野では、医療プラットフォーム、オンライン診療、医師ネットワークを持つ企業が強みを発揮している。代表格としてメドレーは、オンライン診療システム「CLINICS」や医療情報サービス「MEDLEY」などを運営。医療・介護人材マッチング、介護情報サービスなども提供し、人口高齢化社会における需要が見込まれている。
また、医師会員数の多さやデータ利活用の強みを持つエムスリー(m3.comを中心としたサービス)は、医薬プロモーション、医療機関支援、さらにビッグデータやゲノム医療など高付加価値サービスへの拡張が期待されており、収益性の改善も見込まれている。
加えて、ヘルステックスタートアップの中でUbie、FiNC Technologies等も名前が挙がっており、予防医療や生活習慣病対策、遠隔医療システムなどで市場を切り込むポテンシャルが高い。
自動運転:実装フェーズへ向かう技術革新
自動運転関連では、技術開発・制度整備ともに後半に向けて実用化の兆しが見える。トヨタ自動車(7203)はNTTと共同でAIプラットフォームを構築中で、交通事故削減や運転支援機能(ADAS)などの強化を掲げており、自動運転技術に関する研究開発投資を拡大している。
また、株テーマとして「自動運転」「スマートカー」関連の銘柄リストでは、3653モルフォや6958日本シイエムケイ、4420イーソル、2317システナなどが、画像認識/制御系ソフトウェア、ECU(電子制御ユニット)、マップ・センサー技術などで存在感を増している。これらは自動運転レベル2〜3の領域での技術応用が近く、将来のレベル4以上の実用化に備える位置づけにある。
テーマ横断で注目すべき要素とリスク
これら三テーマに共通する注目要素は以下の通り:
- 政府の政策支援(GX政策、電力インフラ補助、デジタル通貨・医療制度改革)
- 技術革新の進展(AI/センサー・通信・データ処理)
- 市場規模の拡大可能性(再生可能エネルギー、遠隔医療、決済インフラなど)
ただしリスクも無視できない:
- 規制の変化(電力ルール、医療法規、デジタル通貨に関する法律など)
- 技術実証とコストのギャップ(自動運転のセンサー・マッピングのコスト、DXシステムの運用コストなど)
- 為替・資源価格・資本コストの影響(クリーンテック設備の調達コストなど)
注目銘柄ピックアップ
以下は、2025年後半に特に飛躍が期待される具体的銘柄例:
分野 | 銘柄 | 特徴 |
---|---|---|
クリーンテック | レノバ(RENOVA) | 再生可能エネルギー発電容量1,600MW、国内外でGX事業拡大 |
クリーンテック | 伊藤忠商事 | 太陽光・蓄電・アンモニア燃料船などで多角的GX投資 |
フィンテック | SBIホールディングス | ステーブルコインなどデジタル通貨・決済インフラ整備関連 |
フィンテック | Speee | ブロックチェーン/電子決済プロジェクト参画で先行ポジション |
ヘルステック | メドレー | オンライン診療・医療プラットフォームでの利用拡大 |
ヘルステック | エムスリー | 医療データ・専門ネットワーク・高付加価値サービスで成長期待 |
自動運転 | トヨタ自動車 | AIプラットフォーム強化とレベル3以上の運転支援技術でリード |
自動運転 | モルフォ、日本シイエムケイ、イーソル、システナ | 画像認識・センサー制御など自動運転の周辺技術で注目 |
まとめ
2025年後半の日本株市場で、クリーンテック・フィンテック・ヘルステックは「成長テーマ」として非常に魅力的である。特にレノバ、伊藤忠商事、SBI、メドレー、エムスリー、トヨタなどは業績や政策対応、技術背景などで“本命株”と見なせる。
投資判断を行う際は、個別企業の業績予測(売上・利益)、技術競争力、政策リスク・規制対応、資本コストなどを総合的に確認することが肝要。また、ETFなどテーマを分散して持てる金融商品を併用し、リスクを抑える戦略も有効だろう。
これら三つのテーマは、日本の成長戦略と国際競争力双方に関わる領域であり、2025年後半〜2030年にかけての中長期投資の中心となる可能性が高い。投資家は本命銘柄を見極め、小さな動きにも敏感でありたい。